アカネハナワラビ
Botrychium ×elegans (Sahashi) Nakaike
アンコがシチトウ×アカハナであるのに対し、アカネはオオハナ×アカハナだと考えられています(Sahasi 1983a, 1983b)。同じくアカハナとの雑種でありながら、伊豆大島ではアカネの方がずっとレアです。シチトウとオオハナは同じ程度にザラですので、シチトウの方がオオハナよりも頻繁に種間交雑を行うといった事があるのかもしれません。葉の質がアンコより柔らかく、小羽片の鋸歯がアンコより鋭いといった点で区別できるそうです(Sahasi 1983b)。
実は私はアカネの認識が苦手で、よく立派なアカハナと間違ったりします。佐橋先生が同定したアカネのサンプルを酵素多型解析(LAP)で調べた結果では、オオハナと同じバンドパターンになりました(ハブハナのページの図7.2をご覧ください)。オオハナは二本のバンドを持ちますが、下の濃い方のバンドは右隣のアカハナのバンドと一致します(図7.2)。したがってアカネ=オオハナ×アカハナ説に矛盾はしませんが、アカハナの血が入っている事を支持する積極的なデータでもありません。さて、オオハナがアカハナと同じバンドを持つという結果は、6倍体という高次倍数体であるオオハナの元々の起源に、アカハナが関与した可能性を示しているのかもしれません。そうであれば、アカネはアカハナのゲノムを二重に持つことになるので、形態がアカハナ寄りに見えるのもうなずけます。しかし酵素多型解析には弱点があり、バンドの相同性をゲル移動度でしか判断できません。見掛けで同じに見えるだけかもしれないのです。この点は、塩基配列を比較できるDNAレベルでの検証を待つ必要があります。