ゴジンカハナワラビ
Botrychium ×silvicola (Sahashi) Ebihara
先ほどのゴジンカの写真(図鑑TOPの図0.1の真ん中)が貧相だったので、立派な個体を載せておきます(図1.1)。伊豆大島で、えらく立派なオオハナがあるなあと思うと、このゴジンカであることが多々あります。シチトウに似てオオハナより葉面に光沢がありますが、冬の厳しさが増すと羽片の縁が赤みを帯びる点は、オオハナに似ています。
ゴジンカは最初Sahashi (1983a)によってオオハナワラビの変種(Sceptridium japonicum (Prantl) Lyon var. silvicola Sahashi)として記載されました。ただし記載を読むと、オオハナとシチトウの混生地に生育する事と形態的特徴から、オオハナとシチトウの雑種である可能性もあると述べられています。Sahashi (1983b)に述べられているように、ゴジンカの胞子は比較的に正常に見えるため、雑種と断定するのを避けたのがオオハナの変種とされた理由のようです。最近になってEbihara et al. (2015)は、核DNA解析の結果(Ebihara and Watano未発表)に基づき、属を広くとると共に、ゴジンカを正式に雑種として表題の学名で記載しました。この記事を書くにあたって、大分前(1990年)に私が酵素多型解析を行ったデータを見直しましたが、ゴジンカがオオハナとシチトウの雑種である事を示す、綺麗な電気泳動像があったので載せておきます(図1.2)。今更30年ほど前の酵素多型解析のデータを論文化する気力が無いので、このような行為をお許し下さい。
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オオハナもシチトウも六倍体(n = 135)です(Nishida et al. 1964, Sahashi 1979b, 佐橋 1984)。ゴジンカの染色体数は調べられていませんが、倍数性の指標としてよく使われる孔辺細胞のサイズから、同じく六倍体だと推定されています(Sahashi 1983b)。推定親種が同じ倍数性なので、ゴジンカの胞子も稔性を持ち、雑種後代が出来ている可能性があるので要注意です。