ミドリハナワラビ
Botrychium triangularifolium (Sahashi) M.Kato
伊豆諸島に固有の植物ならシマホタルブクロ等、数々あるのでしょうが、“伊豆大島”固有の植物種といえば、雑種を除けばミドリハナワラビだけではないでしょうか?とにかく大島町は、もっとミドリハナワラビを宣伝すべきであると思います。葉面の色は鮮やかな緑で光沢もあります。鋸歯は目立ち、真冬には葉の縁が赤く美しく色づきます。図5.1は2月の写真で、この時期になるとアカハナと同様に胞子葉が枯れ落ちています。
種小名は「三角形の葉」という意味です。オオハナワラビ属の植物の栄養葉は基本的に皆、三角形(最下羽片の背軸側の小羽片が目立つ場合は五角形)なのですが、特にこの種から「三角形」のイメージを強く受けるのはなぜでしょうか?恐らく他種より小型なので、葉の先がピンと伸びて緊張感があるからでしょう。“伊豆大島”固有と聞いて、アカハナの単なる変わり者なんじゃないのと思われるかもしれませんが、実際に眺めてみると、独立した種としての扱い(Sahshi 1983a)に納得できます。Watano and Sahashi (1992)の酵素多型解析によれば、ミドリは調べた9遺伝子座全てで変異が全く無い事が述べられています。アカハナ、ミドリ、フユノハナワラビ、エゾフユノハナワラビの4種間の比較では、アカハナとミドリが最も遺伝的に類似している事も示されています。アカハナから最近分化したのでしょうが、どういう種分化プロセスだったのでしょうか?